エッセイ集

開店以来ずっと可愛がってもらっているお客様が

10数年前の当店での出来事を

素敵なエッセイに・・・

冷え込む寒い夜に、こころから温まるプレゼントをいただきました

 

 

ビストロ・シェケンの片隅で

 

その日私は洒落たカフェカーテンが窓辺に揺れるビストロの片隅に居ました。

この店は陽気なパリっ子達が美味しい味を求めてつどう、

日本にいながらまさにそんな風情を感じさせるお店です。

味も心も満足する唯一の空間の中で

ある時居合わせたお客さんの事がずっと記憶に残っているのです。

店内は、私とその二人のお客さんだけでした。

今時の若者らしくお洒落なファッションにピアスをした初々しいカップルでした。

この店は、シャンソンかフランス語のラジオの音が流れているのですが、

二人の声が聞こえてきません。

見つめあって楽しそうにランチを食べています。

やがてコーヒーとデザートが運ばれてくると

どちらからともなく、指先が動きはじめました。

すると二人は、手話で会話を始めたのです。

 

店内に流れるシャンソンと、優しい春の陽が窓のカーテンを伝います。

まるでフランス映画のような温かな光景でした。

とびっきり美味しいランチの味とともに

忘れられない思い出です。

 

 

熊本市  「ビストロ・シェケン」  にて